外はイルミネーションが輝き、店頭ではお客を呼び込もうと店員がサンタの格好をして
商売をする。
 カップルは仲良く手を繋いで歩き、サラリーマンは家族へのケーキをぶら下げて帰る。
 そんないつもより賑やかなクリスマスの夜。

「むふ〜ん☆」

 俺とミルファは自分の家に居た。

「ねぇ、ミルファ。本当にこれで良かったの?」
「良かったの! あたしは十分嬉しいもん」

 コタツに入り、二人だけの時間を過ごすというのが彼女の要望。
 一応雰囲気を出す為に物置で埃を被っていたクリスマスツリーは飾ってるし、クリスマ
スケーキもミルファが作ってくれた。
 シャンパンだってある。勿論ノンアルコールだけど。

 でも、真ん中に鎮座する鍋が全ての雰囲気をぶち壊しにしてると思うんだ。

「なんで鍋……」
「美味しくない?」
「いや、美味しいけどね。凄く違和感があるというか……」
 どんな家でもクリスマスに鍋は回避すると思うんだけど。
 これじゃあ宴会か飲み会と大差なくなってしまう。
「ほら、鍋なら二人で一緒につついてぇ、寄り添ってぇ……」
「それは分かるんだけど……」
「はい! この鳥だんご食べごろだよー」
「う、うん」
 確かにこの鍋は文句無く美味しい。
 しかし、これでミルファは本当に楽しいのか不安になってしまうもので。
「なぁ、ミルファ……」
「ん〜?」
「プレゼント、取りに行きたいんだけど」
「えー。そんなの後で良いよー」
 そ、そんなの……。
「だって、今貴明が居なくなったら隣寂しくなっちゃうもん。今日は、日が変わるまで
 ずっと貴明と一緒に居るの!」
「でも、クリスマスプレゼントだしさ。今日渡さないと」
「むー……貴明が選んでくれたんだもんね」
「そうそう、そういう事」
「あたしも用意はしてるし……仕方ないか」
 用意してあるのに渋ってたのか。
 どうも優先順位がおかしいぞ。
「じゃあすぐに戻ってきてね! すぐだよ!」
「はいはい」
 急かされつつも何とか許可を貰った俺は、寒い廊下を通り、自分の部屋へと急いだ。
 この階段を駆け足で上るなんてどれだけぶりなんだか。

「はぁ……はぁ……おまたせ」
「おそーい」
「一階と、二階じゃ、差があるのは仕方ないだろ……はぁ」
 家で息を切らす事になるとは思わなかった。
 既にコタツに入って準備万端のミルファは、早く座れと、自分の隣をポンポンと叩く。
 言われるままに座ると、そそくさと彼女は俺に寄り添ってきた。
 なんだか今日はいつも以上に甘えてきている気がする。
「えへー☆」
「ほら、交換交換。はい、メリークリスマス」
「はい。メリークリスマース!」
 互いに渡しあった袋を開けると、中からはマフラーが出てきた。
「これ……自分で編んだの?」
「あ、やっぱり分かっちゃう? 頑張ったんだけどなぁ……」
 そのマフラーは毛糸で編まれていて、市販のものとは少し違う感じがしたから聞いてみ
ると、彼女は少し恥ずかしそうにしてきた。
「いや、下手とかそういう事じゃなくてね。そんな感じがしたからさ。全然問題ないよ。
 それよりも編めた事に驚いた」
「へへーん。春夏さんに習ったんだもんねー」
「いつの間に……」
 気づかないところで春夏さんとの交流が頻繁に行われてるようだ。
 何か、春夏さんから変な事を吹き込まれて無いと良いんだけど。
「1ヶ月位前からかな? ちょくちょく教えてもらってたの。春夏さんには飲み込みが早
 いって言われたよ」
「まぁ、このみよりは早そうだな……」
「う、うん……このみちゃんは大変な事になってた……」
 流石というか何と言うか……。
 しかし飲み込みが早いのは学習型OSだからだろうか。凄いもんだ。
 俺でも一ヶ月で出来るかどうか。
「でもさ……なんでピンク?」
「ほら、これならいつでもあたしと一緒に居る気分に」
「一緒に居るじゃん……」
「あー、まぁそうだねぇー」
 自分で言って少し恥ずかしいけれど、一緒に居ないことの方が最近は少ないと自覚は
出来る。
 タマ姉にも呆れられたくらいだ。

「わぁ……☆」
 マフラーについての語らいも一段落し、今度は俺からミルファへのプレゼントを開けて
もらうと、彼女の目が輝いた。
「可愛いネックレス……雪の結晶なんだね」
「こっちじゃあんまり雪なんか降らないけどね、気分はホワイトクリスマスって事で」
「でも、これ冬じゃないと付けられないよ?」
「う……」
 何となく可愛いという理由だけで買ったのがまずかったかな……そう言うところまでは
考えてなかった。
 自分の浅はかさに情けなくなりつつも、ミルファは嬉しそうにネックレスを付けてくれ
た。
「似合う?」
「うん。思ったより小さかったかな」
「これ位が一番良いと思うよ。それに、貴明がくれたものなら関係ないもん」
「あはは……申し訳ない」
「いーの! くれたのが一番嬉しいんだもん!」
 それが真実と分かる笑顔を見せてくれたのが嬉しかった。

 メインのプレゼントも終え、のんびりとテレビを眺める時間。
 クリスマスの特番もただ眺めるだけで、二人で居る時間を楽しんでいるというのが正直
なところだった。
 肩から伝わってくる彼女のぬくもりがなんとも心地良い。
「ねぇ、貴明……」
「ん……?」
「来年も、一緒にクリスマスしようね」
「そうだな……来年は親父とかも帰ってきてるかもしれないな」
「そしたらぁ、ご両親公認の仲だねー☆」
「そ、そうなるね」
 あの二人の事だから凄い喜びそうだ。
 勝手にパーティーとか始めるかもしれないな。
「でも、二人が居たらこんな風にしてられないと思うぞ?」
「むー……それはちょっと困るかも。じゃあ、今のうちにいーっぱいイチャイチャしてお
 かないとね!」
 え、そういう理屈?
 変な結論を導き出してさらにくっついてくるミルファ。
 本当、今日は甘えん坊だこと。
「そんなにくっつかれると、我慢できなくなるぞ?」
「んー。良いよー? むしろ、期待してたりして……☆」
 いつもと少しだけ違う、何かを求める笑顔に吸い寄せられるように俺は彼女の唇を奪う。
 こんなところでするのは少し気が引けるけど、もう止められない。



「えへへ……作戦成功……」
「ん? 何か言った?」
「んーん。何でもなーい」  




 



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