前書き───
100万ヒット記念に100万ヒットした幸運なBOYに頂いたリクエストSSになります。
リクエストとしては「ADヒロインを使わないでTH2(無印)メンバー全員出演のSS」と言う
自分にとって実は初挑戦のものとなりました。
2年以上かいてて全員出演書いてないというのも珍しいのかもしれません。ミルファメインだと
どうしても全員出演ものって書かないんですよね。
だから色々と悩んでました。
結局書きあがったのが2ヶ月ほど経った頃になってしまいました。すみません。
お祭りが一番合わせやすいと言う事と、時期的なものでお花見と言う題材となりました。
本編の時系列的に考えると少々無理があります。なので時間的なものは無視していただけると
ありがたいです。感覚的にはソメイヨシノが散った頃。4月の中旬辺りと思ってください。
ちなみに八重桜はこの頃から咲き始めます。
見る機会があったらみてみてください。八重桜も味があっていいものですよ。
次は200万ヒット記念目指して……1111111ヒットでも面白いかもしれないですけどね。
とにかく頑張ります。
ADヒロインズも交えたものになったら収集つかなくなりそう……
春うららかな休日。
うららかって何か良く知らないけど良い天気で程よく暖かく、昼寝には持って来いの状
態だってことは分かる。
そんな休日に俺はこのみと土手を歩いていた。
ゲンジ丸の散歩に行くから一緒に行こうと言うお誘いだった……と思う。
「タカくん早く早く〜」
「別に何か目的があるわけじゃないのにそんなに急ぐなって。それにこいつは俺以上にバ
テてるぞ」
少し手前を歩いているこのみ、そして何故か俺がロープを持ってゲンジ丸と同じ位の歩
調で歩いていた。
少なくともこれは飼い主であるこのみの役目だと思うんだが……。
「ほら〜、ゲンジ丸〜。早く来ないとご褒美の魚肉ソーセージはあげないよ〜」
飼い主が餌で釣ってどうする。
「わふっ!!」
ペットもペットで釣られてるし。何て単純なんだこいつは。
二人の関係に少々呆れていると、今まで緩みっぱなしだったロープが急に張られ、俺の
体はロープに引っ張られる体勢になってしまった。
何せ予想だにしていない事だったので俺はバランスを失いつつ何とか体勢を整えようと
たたらを踏みながらゲンジ丸に連れられていく。
こいつこんな元気が一体何処にあるって言うんだ……このみの特訓(正確には散歩)の
おかげなのだろうか、魚肉ソーセージ目掛けてゲンジ丸はものすごい勢いで駆けていく。
「はい、タカくんパース」
「うぉっ!? 何っ!?」
このみは俺に向かって魚肉ソーセージを綺麗な弧を描かせて投げてきた。
中々凄いものでそれは近づいてきたゲンジ丸の体の上を越え、俺の手元へと正確に辿り
着く。
こんな不安定なもので何と言う……これも一種の才能なんだろうか。
そんなこのみの秘められた技能に感心している間に俺は大事な事を忘れていた。
この魚肉ソーセージの目的は何か。
「わふんっ!!」
気付いたときには魚肉ソーセージを空中から追ってきたのか、ゲンジ丸が体を宙に浮か
せ、俺の視界はそのふさふさの毛で覆われていた。
「ぐおぉ……お、重いぃ……」
「むー。そんなに重くないでありますよー」
ゲンジ丸の重さにうなされていると思った俺の耳にはその魚肉ソーセージを投げつけて
きた主犯格の幼馴染の声が入ってきた。
「ん……? このみ、何で俺の上に乗っかってるんだ?」
「何でって、起こしにきてあげたのにタカくん全然起きないんだもん」
「起こしに……」
現状を把握しようと周りの景色を確認する。どうやらここは俺の部屋らしい。
ということは、あれは夢だったらしい。
それにしては嫌にリアリティのある夢だったな……。
特に重さとか
「このみ……」
「うん?」
「もしかして重くなった?」
我ながらデリカシーの無い言葉だとも思ったがそれは幼馴染の特権と言うものだろうか、
特にためらう事も無く聞いてしまった。
このみはその質問に眉間に皺を寄せて俺に抗議をしてきた。
「べ、別に重くなってないであります! 確かに最近食べるご飯の量多くなったわね、っ
てお母さんに言われちゃったけど身長だって、その、胸とか……だって大きくなってるも
ん!!」
「ぐぁっ!! わっ! 分かったから!! ぐふっ!! 俺の腹のぅ! 上でぇぇぇ!!
暴れるなぁう!!」
このみが幾ら軽いとはいえ人一人分の体重を腹部に何度も叩きつけられるのはやばい。
これが食後だったら中身がリバースしてもんじゃを生成しているところだ。
「……何このバカップル」
「あれがパカップル言うんかー」
「さんちゃん、あんなん見たら良くないで」
このみからの攻撃を防ぐ術も無く口から吐きたくも無い空気を吐いているとドアの方か
ら会話が聞こえてくる。
その方向に視線をやると由真、珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃんがドアから顔を覗かせて居た。
「何やってんの三人とも……」
「ちょっとバカップルを見に」
「起こしに来たー」
「間抜けな寝顔に熱湯をかけてやろうと思ったんやけどな……失敗や」
由真の言葉がやけに痛々しい。というか視線が明らかに敵対心むき出しだ。
こんな朝早くから何でこんな思いをしないといけないんだろうか。
「っていうか何でみんな入ってきてるのさ!?」
あまりに突飛な状況のせいか大事なところを忘れていた。
幾ら日本は安全とは言っても泥棒は怖いもので、男性といえども一人暮らしなら寝る前
に施錠位はする。
なのに今ここに4人も客人が居る。
そもそも客人が居るのに起きない俺こそ問題なのかもしれないがそれは無視しておこう。
「あら、鍵ならおばさまからちゃんと預かってるわよ?」
中途半端に開いていたドアを開けて家の鍵と同じものを摘んでちらつかせながらタマ姉
がそこに居た。
「タマ姉か……。タマ姉なら別に入ってきても良いけど……」
「えっ、向坂先輩って通い妻なんですか?」
「通い妻ってかっこえぇなぁ〜」
何か関係ない方向へ話が進んでいってるんだけど。
「えっ!? べ、別に私は通い妻とか言われるような事は何も……」
確かにタマ姉は時々家に来て掃除をしてくれ(というか掃除をさせられ)、ご飯を作っ
てくれたりとありがたい事はしてくれてるけど通い妻とかそんな都合の良いものじゃない。
それくらいタマ姉も分かってるはずなのにタマ姉は何故かかなり焦っている。
何だろう、そう言われても吝かじゃないみたいな態度は。
「その割にはこの家の事よく知ってましたよね」
「いや、それは幼馴染だから……」
更に一人追加。
「草壁さんまで……」
黒くて長い髪を揺らしながら草壁さんが俺の視界の中である部屋の入り口の枠内へと入
ってきた。
一体何人着てるんだ?
「ふっふっふ、タカちゃん後ろががら空きなんよ!!」
「ぐぉっ!?」
何とかこのみをどかしてベッドに座っていた俺の背中に朝の目覚めの時のような重みが
圧し掛かってきた。
「花梨、一体どこから!?」
「そこから」
彼女が指差す先は窓。まさかそんな所から入ってくるなんて……ご近所さんに見られて
たら厄介ごとになりそうだ……。
「うーはまだまだ危機察知能力が足りないようだな」
「るーこまで……っていうかるーこだろ! そんなルート教えたの!」
「そんな事は無い」
何で目を逸らす。
「あ、あのぉ〜……みなさん何をやって……」
「こま……愛佳まで……」
この様子だとみんなが一階から居なくなって寂しくなったのだろう、愛佳までやってき
た。
というかみんなそれぞれに繋がりは無いだろうに何でこんな事になってるんだ?
ピンポーン
状況把握が出来ていないうちに家の呼び鈴が鳴らされる。
これ以上何があるって言うんだ。
流石にこれ以上何が起こっても驚かないだろう。
「はーい」
「って何でタマ姉が!?」
「やっぱり通い妻……」
「ち、違うわよっ!!」
由真の突っ込みに顔を赤くしながらタマ姉が俺の変わりに玄関へと行ってしまった。
何か俺の伺い知らないところで話が進んでる気が
「あの、遅れてしまってごめんなさい」
「ささらまで……」
驚きはしない。
ただ諦めと言うか、呆れに近い感情が俺を支配していた。
「さて、みんな揃った事だし、タカ坊さっさと着替えちゃいなさい」
確かに俺だけが寝起きでパジャマの状態。着替えた方が良さそうだ。
そんなタマ姉の言葉を無視するように俺の後ろでキョロキョロしていた花梨がベッドの
上で立ち上がった。
「その前にこの部屋はミステリーでいっぱいなんよ!! 何せ男子高生のプライベート満
載な部屋なんだから!!」
花梨の一言にこのみ、タマ姉を除くみんなの表情が興味津々そうなものへと一変する。
その表情を見た瞬間、俺のからだの血の気が引いていくのが比喩等ではなくリアルに感
じ取れた。
や、止め……
結局俺のプライベートが荒らされ、俺が土下座をするまでその羞恥ショーは続けられる
事となった。
個人情報保護法は何も助けてくれないらしい。
というかこのみとタマ姉は笑いながら見てるし……人間不信になりそうだ。
「で、何か用なわけ」
散々荒らされた後に何とかみんなに部屋から出て行ってもらい、準備が出来たところで
一階へと下りていくとご飯は我慢しなさいと言うタマ姉の非情な命が下された。
変わりに入れたてのコーヒーを飲むが空きっ腹には少々キツい。美味しいけど。
しかしそんな事でプライベートが無くなった事に対しての不満が解消されるわけも無く、
とりあえず今この状況の理由を聞くことにする。
「みんなでお花見しようと思ったのよ。人数が多いほうが面白いでしょ?」
「その提案を向坂さんから聞いて」
「このみが伝令役になったであります!」
何で生徒会の面々がそんな事をしてるんだよ……。と、生徒会という単語を聞いて俺は
嫌な人物を思い出した。
春(特に頭の中的な意味で)の嵐と言う言葉が似合うあの人。
「……ささら、まーりゃん先輩は?」
「まーりゃん先輩なら保護者の方に怒られて今週は軟禁状態だそうです」
冷静に返してくる辺り想定内の事だったらしい。
「あの人に出てこられたら宴会が暴動になりかねないから」
「……確かにね。けどどうして俺に話してなかったの? 同じ生徒会のメンバーなんだか
ら教えてくれても良かったのに」
それどころか愛佳から草壁さんへ、と同じクラス内で連絡の行き来があったのに自分だ
け知らされて無い辺り除け者にされてるみたいで寂しいものがある。
「だって、タカ坊の事だから逃げ出すと思って」
タマ姉はサラッと酷い事を言ってのけた。
俺ってそんな人間だと思われてたんだろうか。
「いや、流石に逃げ出したりはしないって……。流石に俺に不利益があったりするならま
だしも花見なんでしょ? 別に良いじゃないか」
「ふふっ。さっきのは冗談よ。別に秘密にするつもりは無かったんだけどちょっと女性同
士で話しておきたいこともあったし……ね」
タマ姉はそう言うと視線を俺から外して誰となしに見ると、食事をしていたみんなの動
きが止まった。
あ、るーこだけは食べてるか。
「何それ。みんなに共通点なんてあったっけ」
「それは……まぁ良いじゃない。タカ坊を通じての知り合いになっただけよ」
「そうなんだ。何にせよ花見なら歓迎だよ」
「そう。良かった」
俺が断ることなんか無いと分かってるだろうに俺が了承するとタマ姉は嬉しそうに笑顔
をこちらへと向けてくれた。
あの慈愛に満ちたというか、包まれるような笑顔を見せられるとどうしても顔が熱くな
ってしまう。
あんな笑顔を見せられるから逆らえないんだよな。
「じゃあ行きましょうか」
朝食も終え、俺の準備が出来たところでタマ姉の号令で出発と相成った。
「そういえばもう桜って殆ど散っちゃってると思うんだけど良い所なんてあったっけ?」
今年は例年よりも開花が早かったらしく、先週の時にニュースで今が見頃だと言ってい
た記憶がある。
ここは山が近いわけでもなく、何時もの通学路でも今週には花びらが大分舞っていた。
今行っても寂しい事になってると思うんだけど。
しかしタマ姉は当てがあるらしく、自信満々の様子だ。
「桜は何もソメイヨシノだけじゃないわよ?」
「ソメイヨシノ?」
って桜の学名か何かだろうか
「染井吉野は良くテレビとかで出てくる有名な品種ですよ。花びらが5枚で葉が出る前に
花が咲くから綺麗なんです」
俺の疑問に愛佳が親切に答えてくれた。
なるほど。花にも色んな品種はあるもんだし、桜にだってあって当然だよな。
「そうかそうか。しかし意外だったな」
「? 何がですか?」
「いや、愛佳って花より団子が似合いそうな感じだし」
「そんなことないよぉ〜。花を見ながら食べるお団子は確かに美味しいけどぉ……」
あ、そこは否定しないんだ。
と言う事は花も団子も、と言ったところか。中々強欲なお嬢さんだ。
「ふふふ。今回は桜でも八重桜よ。うちの家の端の方にあったのを思い出してね。雄二に
準備してもらってるわ」
「八重桜はソメイヨシノよりも開花が後で花びらが多いのが特徴なんですよ。葉っぱと一
緒に咲くんですけど花の色が濃い目のピンクで綺麗なんです」
えっへん、と言った感じで知識を披露してくれた愛佳。
しかし俺が気になるのは別の方だったりする。
「雄二の方が俺以上に逃げ出しそうなんだけど」
「あら、それなら大丈夫よ。ちゃんとできたらお小遣いあげる事にしてあるから」
さすが雄二の姉。
扱い方が良く分かっていらっしゃるようで。
「由真〜。無視されたよぉ〜」
「はいはい、あたしはちゃんと聞いてたから安心しなさい」
「よぉ、雄二、ごくろうさん」
その桜がある場所に行くと雄二が大きく広げられたレジャーシートの真ん中で一人寂し
く待っていると言う実に味わいのある風景があった。
「ごくろうさんじゃねぇよ!! 幾らあったかいと言ってもこんなところに一人で……
っていうか家の敷地内なんだから俺が場所とっておく必要ないじゃねーか!! しかもお
前はそんな両手で収まりきらない位の女の子はべらせて何だこれは! 格差社会も良いと
ころじゃねーか!! 納得いかーん!!」
「日頃頑張ってるかの差じゃない? とりあえずはお疲れ様。お弁当の中身、食べてない
わよね」
「そりゃ我慢したさ。それにみんなそれぞれ作ってきてくれてるって聞いたし、我慢しな
けりゃ男が廃るってもんだぜ!!」
「別にあんたの為に作ってるわけじゃないんだけどね」
「由真、結構酷い事をサラッと言うよな」
「ツンデレっぽく言ってくれれば俺的にヒットだったんだけどなぁ」
「何それ」
雄二、酷いことを言われてもめげない辺りは素直に凄いと思えるぞ。
「おぉ〜!」
「これは凄い」
目の前に並べられたみんなの手作り弁当。
流石に個々の量こそ多くないが塵も積もれば何とやらなわけで豪華絢爛と言った感じだ。
タマ姉はこういうのが好きだからか三段重で作っており、和、洋、中とラインナップに
も飛んでいる。
「このみは春夏さんに教えてもらったのか?」
「うん。だからお花見弁当みたいじゃないけど……ごめんね?」
中身を見るとミニハンバーグ、玉子焼き、ウィンナー等と言った定番と言う感じ。
確かに華やかさは無いけどこれもこのみの手作りなら納得というかこれでも凄いと思え
る。
「いや、昔のこのみに比べれば大分進歩したんじゃないか? これなんか……」
昔に比べて程よいこげ加減になっている玉子焼きに手をつける。
「あっ!」
「……うん。美味い」
「もー! タカくん勝手に食べちゃダメだよぉ〜!!」
「あ、食べたかったか? ごめんごめん」
「そうじゃないけどぉ〜!!」
そんな俺とこのみの会話に愛佳が申し訳なさそうに肩を叩いて入ってくる。
「あのぉ……貴明くん?」
「またバカップルが居るわ……」
「もう、タカ坊もちゃんといただきますしてから食べなさい?」
「……タマやん突っ込むところがちゃうと思うで」
どうやら俺とこのみの会話がまたバカップルと思われたらしく、冷たい視線が周囲から
注がれている。
「ごめんごめん。じゃあ食べるとして、折角なんだし誰か代表で一言言った方が良いんじ
ゃない?」
「じゃあここはやっぱり生徒会長である久寿川先輩が良いんじゃないですか?」
草壁さんの提案に一同賛成の声を上げる。
ささらはみんなの声に戸惑いながらも生徒会長の経験からだろうか、すっと立ち上がる。
立てば芍薬座れば牡丹、という言葉が似合いそうな程にささらは立っている姿も綺麗だ。
みんなの前で話すのに慣れているからか、タマ姉と違った凄みを感じる。
「あの……こんな会にお呼び頂いてありがとうございます。私自身こんな風にみんなで遊
ぶといった事をする事無かったから……凄く嬉しいです。この提案をしてくれた環さんに
感謝します。それじゃあみなさんあんまり羽目を外し過ぎない程度に楽しみましょう」
その凄みと違った控えめな言葉もまたささららしいと言うべきなんだろう。
ささらの言葉が終わったところで雄二と花梨が立ち上がる。
「ではみなさん飲み物を持っていただいたところで!!」
「かんぱ〜い!!!」
「「「かんぱーい!!」」」
みんなご飯を我慢していたらしく、それぞれの料理を食べあって感想を言い合っている。
「るーこって和食党?」
「るーにとっては和も洋も中も関係ない。るーが美味いと思ったものを作っただけだ」
「るーこは結構料理上手いからな」
「へぇ、結構意外ですね。調理実習の時とか気付かなかったですよ」
「むむむ……あたしより美味いかも」
「由真のも美味いじゃないか。このブロッコリーとか」
「……それ茹でてマヨネーズ和えただけだし」
「……ごめん」
「いやー。瑠璃ちゃんの中華料理は姉貴より美味いかもなぁ」
「あら、本当に美味しいわね」
「瑠璃ちゃんの鍋捌きは特級厨士もんやもんねー」
「そ、そんなに褒めても何もでぇへんよ」
褒めてるのだろうか。
「瑠璃ちゃんツンデレやー☆」
「な、何と!!」
「雄二、止めなさい」
「ぱ、ぱゅっ!?」
みんなそれぞれに楽しんでいるところで花梨が何かを持ってやってきた。
中身を見てみると全部たまごサンド。流石は花梨と言うべきか。
「たかちゃんロシアンたまごサンドするー?」
「何その嫌なネーミングのものは」
「このたまごサンドの中で一つだけ辛子満載のたまごサンドがありまーす。それを食べた
人が負けなんよ」
「何でそんなものを……」
「だってお花見なんだからゲーム性のあるものも良いでしょ?」
発想は正しいけどこれはどうなんだろう。
「じゃあこのみはこれにするであります!」
「チャレンジャーだな、このみ。じゃあ俺はこれ」
そう言って後は連鎖反応でみんなたまごサンドを手に取る。
恐らくはみんなが持ってる中の一つが当たりというわけか……。
「それじゃあ一斉にいくんよ! せーの!!」
…………
「あれ? みんな大丈夫?」
「みたいね」
「おいおい、まさか入れ忘れとか無いよな?」
「そんな事無いよ。だって……生徒会長が当たり取ってたもん」
……あぁそうか。
「そうだよな。自分で仕込んだんだから当たりの場所くらい知ってるよな。あれ? そう
するとささらは……」
そこでみんなの視線がささらへと向けられる。
そしてささらはと言うと
「……?」
みんなの視線に何?と言う表情を見せるささら。あの反応を見る限りは大量の辛子入り
たまごサンドとは思えない。
「平気そうだな」
「そうね……ささら、ちょっとごめんね。雄二、ちょっと来なさい」
「何だよ」
タマ姉はささらが食べていた玉子サンドの中身を指で掬うと雄二の口の中へと突っ込ん
だ。
「……っ!? んむぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!」
少しの間の後に雄二がもんどり打って苦しみ始めた。
どうやら洒落にならない量の辛子が入っているらしい。
「ささらってもしかして鈍感?」
「少しは辛いかな、って思ったけど……そんなに辛かったかな……」
「trtzrん正宇にバsfkさ@0おpdがいjhsfgsjほdfsb」
雄二の動きだけで分かる。恐らくたまごより辛子が多いはずだ。
「花梨……そんなに入れたのか?」
「いやぁ、あれ位の方が楽しいかなぁって」
食べたのがささらと雄二で良かった……。
「そろそろお開きにしましょうか」
一通り食べた後は談笑。花見と言うのはそんなもんだ。
小さい子供なら走り回るし、大人なら酒を飲む。どちらでもない俺たちは食べるか話す
のが精々だ。
しかし元々付き合いが無かったみんなが集まっているものだから話すことも多いのだろ
う。何より女性は話すことが好きなもんだからあっという間に時間は過ぎる。
るーこと珊瑚ちゃんと花梨が何かを呼ぼうとしているところで花見はお開きする事にな
った。
「タマ姉。ありがとう」
「あら、どうしたの?」
みんなが散り散りに帰っていく中、俺とこのみ、雄二とタマ姉の幼馴染組が残る中で俺
はタマ姉に感謝の言葉を言っていた。
「みんな楽しそうだった。瑠璃ちゃんも珊瑚ちゃんも花梨も友達少なかったからさ。俺が
何とかしたくてもこればっかりは難しかったし」
「そう。やっぱりタカ坊は偉いのね。ちゃんとみんなの事見てあげていて……」
「そうかな。これもタマ姉の英才教育の賜物だと思うよ」
「あら、じゃあ教育成功ね」
ちょっとした冗談の混じる少し真剣な会話。
少し恥ずかしいけどタマ姉にだからこそ言える事だった。
「おらー。姉貴準備しないと間に合わねーんじゃねーのかー?」
門の前で話していると玄関の方で雄二がタマ姉を呼ぶ。
間に合うとか一体なんだろう。用事でもあるのかな?
「じゃあタマ姉、また明日ね」
「何言ってるの? タカ坊。これからが本番じゃない」
「え?」
「これからお花見第二部でありますよー」
「第二部!?」
「そう。第二部。夜桜を楽しみながらの食事も良いものでしょ?」
「なるほどね」
二人に引かれながら俺はまた門をくぐる。
このままお泊り会なんて小学生以来だろうか。
古き思い出を頭に浮かべながら懐かしくも新鮮な感覚が俺を包んでいた。