「もう……我慢できません……20年間も待ってたんですから……」
 その憂いを帯びた表情はどこか艶やかで、20年前の彼女とは同じようでいてどことなく
違いを感じる。
 姿形はあの時と殆ど変わらず、しかし経験値だけを積んでいるような。
 そう考えると魔族は卑怯な事この上ないのではないだろうか。少し先に居る大勢の客人の
事など忘れ、俺の頭の中は目の前に居る黒髪の彼女で支配されていた。

 彼女の願いに答えるために俺はセージの顎元に手を添える。
 一瞬ピクンと反応した彼女だったが何をされるのか分かったのか、目を閉じて少し顎を
上げてくれた。
 彼女の口に鎮座するプリンとしたピンク色の唇。何も塗ってはいないように見えるが
その色は鮮やかで瑞々しく見える。
 こんなものを目の前に差し出されたら頂く以外に選択肢などは無い。
 俺は逸る気持ちを抑えつつ彼女にキスをした。
 俺にとってはそんなに昔ではないが彼女にとっては最早おぼろげな記憶にすらなってい
そうな各々の唇の感触。
 その記憶を辿るように彼女は俺の唇へとキスを繰り返す。
 鳥が獲物を突付く様に何度も何度も付いては離れるバードキス。それは彼女の20年間の
重いが凝縮されているようで、俺もそれに答えるべく唇を重ねた。
「んっ……んっ……んんぅ……」
 唇を重ねるのに飽き足らなくなった二人は互いに確認するでもなく口を僅かに開く。
 その隙間に互いの舌を滑り込ませる。
 彼女の体が示すように彼女の口の中も、舌も俺とは比べ物にならないくらいに小さく、
それでも俺の隅々までを感じようとその可愛い舌を動かして俺の唇や舌を突付いてくる。
 暫くの間、部屋の中は舌が絡み、唾液が放つ粘着音で支配された。


「……これで少しは満足できた?」
 幾らか時が過ぎた後、口を離すと火照ったセージの顔がそこにはあった。
 すぐに返答してこないところをみるとまだ夢見心地らしい。
「……セージ?」
「少しだけ……少しだけです。もっと、もっとして下さいますか?」
 もっと、という事はつまりそういう事なのだろう。
 その彼女の要望にこたえるべく、俺は彼女の足を伝い、スカートの中へと手を伸ばした。
 スカートの中に入った時はビクンと反応したものの、その意図が分かっているのか彼女の
方から自然と足を広げて俺を受け入れてくれた。
 彼女のすべすべとした実に気持ち良い肌の感触を楽しみながら着いたその終着点。
 そこは予想していたように既に湿り気を帯びて準備はできているようだった。
 人差し指をスジに沿って這わせてみた。
「きゃうっ!!」
「もう十分に濡れてるみたいだけど……?」
「そ、それは稟さまにしてもらったからです……べ、別に私がエッチだからじゃありません」
 尖った耳の先端まで真っ赤にしながら顔を背けられても何の説得力も無いわけだけど……。
 そのセージの言葉を確認してみるべくスジの端にある突起に指を止めると少し強めに
刺激を与えてみた。
「ひゃぁぁぁぁぁ!!! り、稟さまそこ、あうんっっっっっ!!!」
「すごい感じてるみたいだね。エッチな子はこうはならないと思うけど?」
「そ、それは稟さまが巧いからですっ! んううっっっっっっ!!!」
 感じながらも必死に反論をしてくるのがまた可愛い。
 しかしもう彼女の我慢も限界に近づいているみたいだ。口には出さないものの体がそれを
示していた。
 腰はこちらにすりつくように動き、彼女の手も自然と俺の服の裾をつかんでいた。
「セージ、そろそろ……良いか?」
「はい……来てください……」
 体の位置を入れ替え、彼女の足の間へと体を滑り込ませる。
 下着を取り払い、スカートをたくし上げた状態のそこは改めて見てもあの頃と何も
変わっておらず、毛の一つも生えていない綺麗なものだった。
 やはり魔族は何か秘法の様な物があるんじゃなかろうか……、そう思えてしまう。
 しかしそうすると俺の耳から入ってきていた情報の限りでは彼女の秘部はあの頃以来
使われていない。ほぼ処女の体であるという事になる。
 ここはほぐしてからの方が良いのではなかろうか。
 セージが痛がるのも可哀想だし、少しでも楽になればと俺は指を秘部へと添えた。
「り、稟さま!?」
 もう入れられるものだと思っていたのだろう、セージが驚きの声を上げた。
「ほら、さすがにいきなりだと痛いだろうしさ」
「そ、それはそうかもしれないですけど……ですけど久しぶりですからやっぱり最初は
稟さまの……その…………稟さま自身と繋がりたいです。少しくらい痛いのは我慢します」
 決意に満ちながらの懇願の表情。
 彼女がそこまで考えていたとは恐れいってしまった。その彼女の思いに答えるように
俺は指を離し、俺自身を添え当てた。
「入れるよ、力抜いて……」
「はい……」
 彼女が息を吐いたのを見て俺はその狭い入り口へ亀頭を挿入した。
「つっ……」
「く……すげ…………」
 先端を入れただけなのにギチギチとセージの膣は俺を締め付けてきた。
 彼女の表情から察するに痛くないわけはないだろう。しかしここで腰を引いても何も
変わらない。ならばなるべく早く根元まで入れるべきだろう。
 少しでも痛みが和らぐように彼女のなだらかな胸を揉みしだく。先端は既に硬く尖って
おり、軽くつねってみるとグミのようにやわらかいようで弾力はしっかりとある。
 乳首はどうやら感じるらしく、セージの苦悶の表情の中にも気持ちよさが浮かんでいるのが
分かった。
 そうやって痛みを和らげながら少しずつ、彼女の中からの潤滑油も相まって初体験の
時よりかは幾分スムーズに奥まで到達することができた。
「セージ、全部入ったよ」
「はい……」
 頷く彼女の目からはポロポロと涙があふれてきていた。一瞬痛いのかとも心配になったが
その考えが違うものであることはすぐに分かった。
「やっと……やっとまた一つになれました。ずっと……ずっとこの瞬間を待ってたんですよ?
なのに稟さまってば全然着てくれないし……」
「ごめんな、俺から行ってやれなくて」
 こっちに戻ってきてからどうにかすれば魔界に行くことは可能だった。
 しかしそれをしなかったのは俺の中で甘えがあったんだろう。それを思うと申し訳なく
なってしまった。
 彼女に対して謝るように俺は繋がったまま彼女を抱きしめると軽く頭を撫でてやった。
「もぅ、これでも一応あたしの方が年上なんですからぁ……」
「そうだったな。けど別にそんなの気にしてないし」
「やっぱり稟さまは全然変わってないですね。嬉しいです」
 少し互いに見詰め合った後に俺はキツさが和らいできた膣への抽送を再開させた。
「んっ……んっ……んんぁ……」
 痛みも和らいだらしく、俺のペニスの動きにも彼女はしっかりと反応してきた。
 その反応に答えるべく俺は段々と腰の動きの幅を激しくさせた。
 彼女の膣内は十分に濡れた中でもしっかりと締め付け、絡み付いてくる。入り口は今も
しっかりと締め付けて俺を刺激してきた。
「んあっ……あっ……あふぅ…………」
 動きを激しくさせるごとに彼女の声がおとなしいものからはっきりとした喘ぎ声へと
変わっていくのが分かる。
「稟さま……あっっ……きっ、気持ち良い……んんっっっっ! 気持ち良いですかぁ?」
「あぁ、セージの膣……すごい締め付けてきて気持ちいいよ、そろそろやばいかも……」
 実際腰のスピードが自然と速くなってしまうくらいに彼女の中は気持ちよかった。
 彼女も快感が高くなってきているのか時々大きく反応を見せている。
「いつでも……イッて良いですから……ね?」
 余裕なんか無いくせに必死になって見せてくる年上である余裕さ。
 それがどうにも愛しくて俺は完全にクライマックスに向けて腰の動きを激しくさせた。
「きゅ、急に……!! あっ、あっ、あっ、んん〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 彼女も急に襲ってきた快楽に全身をわななかせて反応をしてくる。
 膣内は締め付けてくる感覚が狭まり、限界が近いことを如実に知らせてくれる。彼女と
共にイくべく俺はラストスパートをかけた。
「そっ! そんなにんんんんんんんんんっっっっっっっっっっっっっ!!!! したらっ!
だ、だめですっっっっっっっっっっっっっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
「セ、セージっ! イくよっ!!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっっっっっ!!!!!」
 俺の言葉にセージは声にならない声を上げて俺へとしがみついてきた。
 そして彼女の絶頂を知らせる膣内の痙攣、締め付けによって俺は彼女の膣内へと白濁液を
ぶちまけた。
「あっ……あっ…………ふあぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」
 残りの快楽を搾り出すかのように体を時折震わせる彼女の表情は嬉しさに満ちていた。

 

 

「ま、まずい……」
「すみません……あたしのせいで……」
 情事の後、俺の中でまず最初に思い出されたのがドアを隔て、廊下の少し先にはここの
住人以外にも山のように来客がいる事だった。
 セージもやっと状況に気づいたらしく、俺にひたすらに謝るだけだった。
「最悪の場合、ドアのすぐ向こうに野次馬がいることも覚悟しよう」
「しょ、しょうがないですもんね……」
 そういうセージの額には脂汗が浮かんでいるのが分かった。
 流石に麻弓がスクープとしてばら撒くことは無いとしてもこれをネタに何かを奢らされる
事は覚悟をしておくべきだろう。
 情報を隠蔽するのには金がかかるんだな、というのを改めて感じた。

 あきらめに近い覚悟を決めた俺たちはドアをゆっくりと開けると廊下には誰もおらず、
リビングの方から騒ぎ声が聞こえてきている。
 どうやら最悪のパターンだけは回避できたのかもしれない。
「じゃ、リビングに行ってみようか」
「は、はい」
 何故か結婚会見を受けるような心境で祭りが大好きな連中が待つリビングへと向かった。

 

「おぅ、稟殿! おせぇじゃねぇか! ほれ、さっさとこっちに来いって!!」
「やぁセージ。やっと起きたんだね。今回の主役はもちろん中心に来ないとねぇ」
「は、はぁ……」
「あ、あたしが主役なんですか?」
「そりゃそうだろ? だってチビっ子が稟殿にわざわざ会いに人間界に来たってんだ。
これを祝わなくてどうするってんだよ!!」
 あんたたちは何か名目を作って騒ぎたいだけでしょーが。
 そう言いたい気持ちをぐっと飲み込んで俺は二人に開けられた席へと向かう。
 その途中、料理を運ぶアイさんが俺の横へとくると一言
「二人とも、この二人が居る近くであんな事、無用心だよ? 気づかないようにしてあげたん
だから感謝してね♪」
 俺の動きが完全に止まってしまった。
 何とか周りに気取られないように注意しながら小さい声でアイさんに言葉を返す。
「ア、アイさん聞いてたんですか?」
「ちょっとだけね。けど聞かれたくなかっただろうから部屋のドアの所にインビジブルに
似た魔法をかけておいたからみんな部屋の存在自体を忘れてたと思うよ?」
「イ、インビジブル?」
「ん〜、簡単に言うと見えなくなる魔法なんだけど、今回は『ドアの存在』を気づかれない
様にその空間だけにかけておいたの。多分大丈夫だったと思うよ? 気づかれたら私にも
分かるから」
「あ、ありがとうございます」
「その代わり、今度何かお願い聞いて欲しいかなぁ〜?」
「こ、考慮させてもらいます」
「じゃあ考えておくね♪」
「は、はぁ……」
 これはある意味借りを作りたくない人に作ってしまったかもしれない。
 しかしちゃんと配慮して魔法をかけてくれたなんて流石セージさんと付き合いの長い
アイさんだ。
 心の中で感謝しつつ俺はあまり挟まれたくない親バカ二人の間へと腰を下ろした。

 


 それからは正に宴会。
 ネリネとシアがきたときも盛大に祝ったが、今回もそれに劣らない規模での宴会だった
かもしれない。
 人数で言えばあの時以上だし、ある程度気心が知れた中だから騒ぎ方もあの時以上かも
しれない…………。
 とりあえず宴会芸と称して街を一つ滅ぼそうとしたり山を一つ破壊しようとするのには
本気で焦ったが。結局この宴会で親バカの二人の頭には結構のこぶができたのは言うまでも
無い。


 しかしこれだけ騒いでもさっさと片付いてしまうのが完璧超人が二人居る凄さだろう。
リビングには死屍累々として眠りこけているみんなが居るが、食器の類は既に完全に
片付いていた。
 そんな楓とセージもみんなと同様にソファーで眠っている。
「さて、運ぶかどうするか……」
 客室が現在は使用中な上、この人数はどうしようもない。とりあえず寝床がある楓と
プリムラ、セージだけでも動かそうとも考えたがこれは骨が折れそうだ。
 そんなことを考えていると俺の両足首をがしっと捕まれる感触が。
「稟〜、こっちで一緒にねよー」
「む〜、稟くんはこっちで寝るのー」
 寝ぼけてるのか酔っ払ってるのかはわからないが、リビングに何とか敷いた布団で
寝ていたネリネとシアが俺の足首をつかんできていた。
「ちょっ、ちょっとネリネ、シア……」
「ほらー、稟〜こっち〜」
「稟くんこっち〜」
 散々騒いだせいで力が十分に入らない。もしくは何かの魔法でも食らってるのかも
しれないがともかく俺は二人によってあっさりと布団の上へと横たわる体勢へとなって
しまった。
 そして両方から首に抱きつかれ、両腕には柔らかい胸の感触。
 なんとも私服の瞬間であることは否定しない。きっとこの瞬間でも何名かの人間から
殺意を受けることになってるだろう。とりあえず謝っておいたほうがいいかもしれない。
 そんなことを考えつつも両方からの抱きつきの力は強くなる一方で、各々の陣地(布団)に
俺を引きずり込もうと引っ張ってくる。


 こ、これはまずい。
 左右両方から引っ張られ、その支点は抱き疲れている首な訳であって……
 ぐ、ぐるじい…………
 気のせいか天井には一枚の絵と、それを見れて満足そうに眠る少年と犬が見えている
気がしなくもない。
 あ、あれを見てしまってはいけない気がするんだ……が…………

 


 ここで俺は意識を失った。

 

 

 


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